熱伝導率と断熱性能

アーキシップス京都

著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)
2023-10-27更新
熱伝導率と断熱性能
上述①②のうち、屋根・外壁・基礎以外は全てメーカーの商品です。
日本メーカーのたゆまない研究開発で、優れた商品が次々と生み出されています。
そこで省エネ住宅のもう一つのポイントになるのが、現場で人の手で作り上げる屋根・外壁・基礎の断熱性能。
施工精度が重要なことは言うまでもありませんが、設計する立場としては、どのよう素材を組み合わせるかの検討を重ねます。
考え方の基礎になるのが素材の熱伝導率です。

メーカー製品の窓や扉の開口部は、高性能な商品が定着してきました。
一般的なサッシはアルミ製ですが、アルミの熱伝導率は200~240W/mkと金属の中でもかなり高い部類です。
ハイエンドな断熱窓に使われる樹脂(塩化ビニル)の熱伝導率は0.16〜0.17W/mkで、アルミとは千倍以上の開きがあります。
メーカーもコスト安定性に優れるアルミサッシの断熱性能を上げる工夫を重ねていますが、素材の優位性は明らか。
選べるなら樹脂サッシをお勧めする理由です。

では屋根や外壁の熱伝導率はどうでしょう。
木や土でできた昔ながらの日本家屋は、素材以前に断熱材を入れる習慣そのものがなく、断熱性能の低さが悩みでした。
そこで安価で施工性の良いグラスウールや断熱ボード、自然素材の羊毛、発泡性の吹付け断熱材など、時代の要請とともに様々な断熱材が開発され、屋根・壁・基礎の断熱性能は飛躍的に改善しました。
弊社でよく採用する硬質ウレタンフォームの吹付け断熱は、熱伝導率は0.040W/mkというまずまずの数値です。
硬質ウレタンフォームは板状だと0.023~4W/mkと、少し数値が良くなります。
数値だけを比較すると板状が良いように見えますが、隙間なく施工できる吹付けに対して板状材は細部に隙間が残るデメリットも。
そこで両方のメリットを活かす、ハイブリッドな方法が提唱されます。
屋根と柱間に厚めに断熱材を吹付け、外側からは板状断熱材を貼り付ける、ダブルバリアの考え方です。

いずれにしても断熱材の熱伝導率は他の素材に比べるとはるかに低いので、今では施工性や製品安定性、コストなどを勘案して、目的に合う選択ができます。
著者:アーキシップス京都(建築家・設計事務所/京都府)

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