【3】「建てるため」の土地調査-後編

株式会社 一級建築士事務所アトリエm

著者:株式会社 一級建築士事務所アトリエm(建築家・設計事務所/大阪府)
2022-05-13更新
【3】「建てるため」の土地調査-後編
3. 「道路境界明示」の要不要


道路境界が明確になっている場合はよいのですが、明確になっていない場合は、「道路境界明示」を求められる場合があります。
測量図面と申請業務、官民ともに立ち合いがもとめられるので、費用が少なくとも40万円程は掛かります。 「道路境界明示」の要不要も、特定行政庁や指定確認検査機関に確認しておく必要があります。



「8.8坪の家」は、道路境界明示をした上で完成しました。
敷地の右下。交差点では隅切りといわれる部分に建築することはできません。
隅切りの要不要も各自治体が定めているルールがある場合があるので、先に調査しておくべき内容です。


4. 「水道の引き込み」と「最終汚水桝」は要注意
暮らす上で重要なインフラ設備ですが、水道と最終汚水桝も事前調査が必要です。


「イタウバハウス」のクライアントは、住みたい地域が決まっていたので、3年程かけて候補地をみつけました。
工場が更地になり、2つの敷地として売り出されることが分かりました。
ただ当該敷地には水道の引込が無かったので、新たに敷設する必要があり、この費用が60万円程かかりました。


また、水道の引込管の太さによって設置可能な水栓の数が決まってきます。
古い設備は直径13mmのことがあり、これでは住宅レベルの水栓をまかなうことができません。水道本管からの引込管を最低でも直径20mm以上にする必要があります。

また、下水道に汚水を流すために、敷地内になる最後の桝を「最終汚水桝」と呼びます。この桝の設置工事費は、大阪市なら行政が負担してくれますが、建築主負担としている行政もあります。
これらの情報は、土地の購入前に是非調査しておきたいところです。


5. 地盤改良の要不要は事前に分かる?
これまでの調査と共に、土地が強固であるか軟弱であるかも分かっているに越したことはありません。
これまでにも書きましたが、建築基準法では「建物の安全」と「敷地の安全」が求められるからです。
土地が軟弱な場合は、地盤改良が必要になってきます。
「柱状改良」と呼ばれる地盤改良方法が比較的安価ですが、それでも30万円を下ることはありません。場合によっては200万円程掛かることもあります。
しかし反対に、地盤が強硬であれば「改良不要」の場合もあるのです。



「Shabby House」は、地盤が非常に良好で、「改良不要」と分かりました。
大阪平野は、2000年程前まで「河内潟」と呼ばれる内海が残っていました。そこに半島のようにせり出しているのが上町台地です。
大阪城を頂点とするこの台地は、非常に地盤が良好です。これまでにも、地盤改良が不要な敷地が数軒ありました。
不要とならずとも、良好な地盤が浅い位置にあるので改良費は安価で済みます。
また、地名に水を連想させる文字が入っているのは、以前そういった土地だった名残の場合があります。
地名や古地図が、その敷地を知る手がかりになることも多々あるのです。


まとめ
「建てるため」の土地調査は、「何とか夢を実現したい」というクライアントと、私たちの葛藤の歴史でもあります。 不要な出費を限界まで抑え、どうしても必要なものは事前に把握しておきたい。
不明確な部分があればあるほど、前に進むのが怖くなってくるからです。
これを私は「遊園地の肝試しの法則」と呼んでいます。
何だか分からないから怖いのであって、良く見れば人のいいアルバイト君なのですから。
これは半分冗談ですが、課題が明確になればあとは解決する方法を模索するだけ。
怖い、避けたいと思うことこそ、正面から向かいあうしか突破する方法はないと思います。
著者:株式会社 一級建築士事務所アトリエm(建築家・設計事務所/大阪府)

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