「中古住宅を買ってリノベーションすれば、新築するより安く戸建の家を建てることができる」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。実際、空き家の増加、政策の後押しもあり、住宅業界ではリノベーションが盛り上がっていて、さまざまな会社、サービスが生まれています。そこで今回は、新築戸建(注文住宅)と中古住宅のリノベーションという2つの家を建てる方法を比較しながら、賢く家を建てるコツをお伝えします!
まずは簡単に、新築戸建(注文住宅)を建てるとはどういうことかについてご案内します。
戸建住宅を新築で建てる、いわゆる注文住宅は、まっさらな土地にゼロから家を建てるということです。「土地の購入」「住宅の建築」という大きく2つのプロセスに分かれます。
基本的には、土地の購入を先に行う方が多いようですが、購入前に「住宅の建築」を請け負ってもらえる人、会社を絞り込んで置いたほうがよいでしょう。良い会社、担当者、建築家なら、候補の土地を一緒に見学して、専門的なアドバイスをもらえます。土地の形状や現地の条例によって建てる家に様々な制約が生まれます。不動産屋さんは「土地を売る」ことが仕事ですので、その土地のデメリットについては口が固くなってしまうケースも考えられます。「家を建てる」ことを想定して、専門家に見てもらいながら土地を選ぶ方が賢いといえるでしょう。
続いて、中古住宅のリノベーション。これは、既に建っている中古住宅を購入して、構造的な部分、利用可能な部分をそのままに、それ以外を取り替える(つくりなおす、とっても過言ではありません)方法です。土地ではなく、土地も含めた「中古住宅の購入」と「リノベーション工事」の2つのプロセスがあります。
こちらも、中古住宅を購入してからリノベーション会社、工務店、設計事務所(建築家)を探すより、先にリノベーション工事を請け負ってもらえる会社、人を絞り込んだほうが良いでしょう。中古住宅はまっさらな土地以上に複雑で、専門家でなければその状態を見極めることは出来ません。販売している不動産会社の担当でも、きちんと状態を理解できているケースは少ないと思われます。(専門家でも、内部の劣化具合などは工事してみないと分からないケースもあります)
中古住宅の状態や住む人の好みによっては、大部分はそのままに、キッチンだけ入れ替える、バスルームとトイレだけリフォーム、といったケースも多く見られますが、これは「家を建てる」というよりも「家を購入する」「各部のリフォームをする」という方が近いので、別の機会にお伝えします。
それでは、新築戸建(注文住宅)と中古住宅のリノベーションを比較しながら、違いをみていきましょう。まずは、外観・内装の見た目から。
新築戸建は、外観も内装も、もちろん全て新しくピカピカです。一方のリノベーションも、「中古住宅」という言葉から古い建物がイメージされますが、新しくつくりなおすため、外観も内装も新築同様にできます。(「見た目の新しさ」では細部まで新品の新築に軍配があがりますが。)主要な柱、梁を残すことも多いですが、化粧して新築のような雰囲気にしたり、あえて古さを残したまま化粧して、味わいのある雰囲気にすることもできます。
外観・内装の見た目に関しては、新築もリノベーションも、どのように工事するか、どのような材料を使うか、施主さん、工務店、建築家次第でいかようにも出来ると思います。
費用については、リノベーションの方が安く抑えられる傾向にあります。
大きく分けると、新築の費用は「土地の価格」+「工事費」、リノベーションの費用は「中古住宅の価格(土地含む)」+「工事費」となります。リノベーションを行うような中古住宅のほとんどは築年数が古く建物の価値が低いため、「土地の価格」と「中古住宅の価格(土地含む)」はほぼ一緒になります。一方で「工事費」は、多くの場合リノベーションの方が安くなります。基礎や構造部分の工事が不要だったり、建材を再利用できたりするためです。そのため、トータルで見ると、リノベーションの方が費用を安く抑えられると思います。
その他、リノベーションの場合、政府や自治体から補助金、助成金が出るケースも多く、その意味でもリノベーションの方が費用的には「お得」といえますね。リノベーションを行う際には、ぜひその土地の自治体に相談してみてください。
どこまでこだわるか、その自由度については、新築の方が高いといえるでしょう。新築は何も無い状態から建てるので、基本的には施主さんの自由に建てることができます。(もちろん、予算や土地、条例、工務店の技術などの制約はありますが)
一方で中古住宅のリノベーションは、もともとの構造部分はそのままですので、自由度は新築に劣ります。工法にもよりますが、間取りの変更などが難しい場合もあります。購入してから後悔しても遅いので、中古住宅を購入してリノベーションを行う際には、中古住宅の購入前に工務店や設計事務所に現地を見てもらって「希望の家にリノベーションできるかどうか」を相談するようにしましょう。
立地については、どちらかといえばリノベーションの方が有利かと思います。条件の良い立地にはすでに家が建っている場合が多く、建物を取り壊して更地にしてから販売するよりも、建物が建ったまま中古住宅として売りに出される可能性のほうが高いと思われるためです。
ただ、いずれにしろ良い立地の土地、中古住宅は当然人気が高いので、あえて優劣をつける必要は無いかもしれません。
新築、リノベーション、どちらもトラブルは多いですが、よりリスクが高いのは中古住宅のリノベーションです。上でも少しお伝えしましたが、中古住宅の場合、見た目では判断できない劣化が見つかるケースもあります。特に築年数が古いと、取り壊して新築として建て直しが必要になる可能性も。そうなると、解体費用+新築費用となり、初めから新築で建てる以上の費用がかかることになります。
繰り返しになりますが、出来る限りトラブルのリスクを避けるためにも、購入前に工務店の担当者(できれば建築士などの資格をもった方)や建築家に現地をチェックしてもらうことをおすすめします。
以上、新築戸建と中古住宅のリノベーションを比較しながら違いをお伝えしてきましたが、大きくまとめると「リスクを抑えたいなら新築戸建」「費用を抑えたいならリノベーション」だと思います。費用を抑えて新築の家を建てることも可能ですが、補助金なども考慮するとリノベーションには及びません。新築にもリスクはありますが、新築のトラブルはリノベーションにも同様のトラブルにあるため、よりリスクが高いのは中古住宅のリノベーションといえます。
家を建てる際、どちらにするか迷われたら、参考にしていただければ幸いです!