建築家・設計事務所による注文住宅の住宅ローン・つなぎ融資・分割融資

SumaIdeaサポートデスク

著者:SumaIdeaサポートデスク(その他の専門家/東京都)
2024-05-09更新

注文住宅を建てる際、ほとんどの方が住宅ローンを利用しています。ハウスメーカーの場合、ローン周りもサポートしてもらえるのですが、建築家・設計事務所の場合はどうなのでしょうか。ご質問をいただくことも多く、不安な方もいらっしゃるかと思いますので、住宅ローンの基本及び建築家・設計事務所と注文住宅を建てる際の住宅ローン・つなぎ融資について整理しました。

住宅ローンとは

住宅ローンは、住宅の購入や建築、改修を目的として利用できるローンです。 一般的なローンよりも金利が優遇されており、減税措置もあるため、多くの方が利用しています。 自分が「住む」ための住宅にしか利用できず、賃貸用や民泊用の建物では住宅ローンを利用することはできません。

賃貸併用住宅や店舗併用住宅、医院併用住宅など、住宅以外の部分もある建物については、住宅部分が延床面積の50%を超えていれば、住宅ローンを利用することができます。

建築家・設計事務所と家を建てる場合の住宅ローン

建築家・設計事務所と家を建てる場合も、もちろん住宅ローンは活用できます。
ハウスメーカーさんのように提携ローンはないため、ご自身で情報を集め、ご自身で申し込む必要があります。
※建築家に進め方など助言してもらえるでしょう。
※審査に必要な図面なども作成してもらえます。

ただ、ハウスメーカーとは異なり、設計(建築家・設計事務所)と施工(工務店)が別の事業者となるため、設計着手から完成までの期間も1年以上かかるケースがほとんどです。
住宅ローンは、建物の引き渡し時に支払われるため、土地購入費用や建築家・設計事務所に支払う設計監理料もローンで支払いたい場合、つなぎ融資や分割融資を活用することになります。

すでに完成している分譲住宅の購入や、比較的短期間で完成するハウスメーカーさんの注文住宅よりも複雑になることが多いため、しっかりと理解して検討を進めましょう。

以下、住宅ローンの種類や手続きの流れ、つなぎ融資、分割融資についてご説明します。

住宅ローンの種類

住宅ローンには、融資する主体によって「銀行ローン」「フラット35」「財形住宅融資」大きく3つの種類があります。

銀行ローン

銀行や信用金庫など、民間金融機関による住宅ローンは、それぞれの金融機関によって、また各金融機関の住宅ローン商品によって、金利や融資上限が異なります。
条件によって金利が優遇されるなど、民間ならではの多様さがあります。

口座を持っている銀行以外でも対応しているので、複数の金融機関、住宅ローン商品を比較検討して、ご自身にとって良いローンを選びましょう。
住宅の建築費用、土地の購入費用は金額が大きいため、少しの金利差でも支払い総額では大きく差がつきます。

無料で複数の銀行を比較できるサイト・サービスもありますので、一度お試しいただくと良いでしょう。
ご自身にあった住宅ローンを検討できるほか、どの程度の金額を借りることができるのか、その際の支払い総額などもイメージできます。

以下は、オンラインで主要銀行の一括比較やアドバイザーへの相談ができるサービスです。

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フラット35

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して融資を行う住宅ローンで、長期固定金利のローンです。 返済期間中、ずっと金利が一定の固定金利のため、安定した返済計画を建てられます。
省エネ性能や耐震性能、バリアフリー性能などに優れた住宅は、一定期間金利が優遇される「フラット35S」もあります。

固定金利で金利変動のリスクは抑えられますが、変動金利に比べると返済総額は高くなる傾向にあります。

固定金利は長期金利によって決まるのですが、経済環境や政策の影響を受けるため、今後どちらが有利かはわかりません。
金利は金融機関によって多少異なるため、フラット35を利用する場合も、複数の金融機関を比較したほうが良いでしょう。

上述の銀行ローンと合わせ、比較してご検討ください。

財形住宅融資

ご勤務されている会社の財形貯蓄による住宅ローンです。
財形貯蓄の期間や残高など、企業によって利用条件が異なりますので、ご勤務先にご確認ください。

住宅ローンの手続きの流れ

住宅ローンの契約の流れは、大きく「情報収集・相談」「仮審査(事前審査)」「本審査」「契約」となります。

情報収集・相談

まずは、どこから融資を受けるかを絞り込む必要があります。
土地を購入する場合は不動産会社さん、ハウスメーカーで建てる場合はハウスメーカーさんの提携している金融期間の住宅ローン(提携ローン)を紹介されることも多いですが、建築家・設計事務所と建てる場合、ご自身で探し、選ぶ必要があります。
※助言をもらったり、ファイナンシャルプランナーさんを紹介してもらえることもあります。

仮審査(事前審査)

住宅ローンの候補を絞り込んだら、続いて仮審査(事前審査)を申し込みます。
これは、本審査の前に行う審査で、年収などを申告して、住宅ローンを借りることができるかどうかを確認します。

数日~10日程度で結果が分かり、承認されれば土地や建物の購入、建築・設計の契約に進みます。

本審査

仮審査を通過すると、正式な本審査へと進みます。
仮審査よりも詳細な資料が必要で、土地や建物の売買契約、建築契約の書類、団信(団体信用生命保険)のための健康申告などが求められます。

契約

本審査承認後、金融機関と契約を行います。
お金の貸借の契約(金銭消費貸借契約)のほか、担保となる土地・建物の抵当権の契約、団信の契約、保証会社を利用する場合は保証契約など、複数の契約を結ぶことになり、やや複雑ですので、しっかりと説明を受け、十分に理解して契約しましょう。

融資実行

契約書類に不備がなければ、建物の引き渡し時に金融機関からお施主さん(住宅ローンの契約者本人)に融資が実行され、入金されます。

注文住宅の場合、建物完成後に融資が行われるため、完成前に必要な支払いには住宅ローンの融資を活用できません。
土地を購入して注文住宅を建てる場合、建築工事に入る前に土地を購入する必要があり、土地代金の支払いもその際に行います。
設計事務所や建築会社への設計監理料や建築請負費用も、完成後に一括ではなく、進捗に応じて段階的に支払うケースが多く、建物の完成前に相応の金額の支払いが発生します。

これらの費用を自己資金で賄える場合は良いのですが、金額も大きく、現実的にはなかなか難しく、住宅ローンの融資で支払いたいところ。それには「つなぎ融資」「分割融資」といった方法があります。

住宅ローンの融資実行前(建物完成前)に必要な資金の借入を行うのが「つなぎ融資」、住宅ローンの融資を副宇回に分けて実行するのが「分割融資(土地先行融資)」です。

つなぎ融資とは

上述の通り、住宅ローンの融資は、建物が完成し、お施主さんに引き渡される際に実行(入金)されます。
建築家・設計事務所との注文住宅では、(土地を購入する場合は)土地購入費用、設計監理料や建築費用の段階的支払いなど、完成前に必要な支払いを住宅ローンで支払うことはできません。

そのような「完成・引き渡し前に必要な資金」を賄うために活用する融資が、つなぎ融資です。

つなぎ融資の仕組み

つなぎ融資は、土地購入費用や設計監理料、建築費用などの支払いに必要な資金を借り入れ、建物の引き渡し後、住宅ローンが実行された際に、その資金で一括返済する仕組みです。

つなぎ融資の流れ

1.建物の引き渡し、住宅ローンの実行までに必要な金額及び支払いのタイミングを確認・整理します。
注文住宅ではつなぎ融資を活用するケースが多いため、住宅ローンと合わせ金融機関に相談し、金利や限度額、申請書類などを確認しておきましょう。

2.土地購入の際や依頼先の建築家・設計事務所さんを決めたら、つなぎ融資を活用したい旨を相談してください。 図面や概算見積などが必要な場合、ほとんどの建築家に協力してもらえます。

3.住宅ローン、つなぎ融資の審査が承認されれば、土地の売買契約や設計事務所との設計監理契約を締結し、金融機関とはつなぎ融資の契約を締結します。
土地の購入費用につなぎ融資を充てる場合、つなぎ融資が実行されその資金で土地費用を支払います。

4.その後、進捗に応じて必要な設計監理料や工事費用を、順次つなぎ融資から支払います。

5.完成・引き渡し時に住宅ローンが実行され、その資金でこれまでのつなぎ融資分を一括返済します。

土地をすでに所有している場合や土地購入費用を自己資金で支払う場合、設計監理料を自己資金で支払う場合などは、建築費用の支払いからつなぎ融資を活用するなど、個々の状況によっても異なります。

つなぎ融資のデメリット

このように住宅ローンの実行までの支払いの融資が受けられるつなぎ融資ですが、住宅ローンと比べると金利が高かったり、手数料や保険料もかかってきます。

工期が伸びると、つなぎ融資の利息も増えたり、つなぎ融資の期限が設定されるケースもありますので、長期化しやすい建築家との家づくりは、特に注意が必要です。

分割融資とは

分割融資は、つなぎ融資とは異なり、住宅ローンを複数回に分割して融資実行する方法です。
土地購入費用、着工時の支払い、中間金の支払いなど、大きな金額が必要なタイミングで融資を受け、支払いに充てることができます。

つなぎ融資と分割融資の比較

つなぎ融資と比較すると、住宅ローンそのものを分割する分割融資のほうが金利は低い傾向にあります。
一方で、土地購入時に土地のみに抵当権を登記することもあり、手数料や登記費用は嵩む傾向にあります。

また、分割融資は提供している金融機関が限られ、低金利の銀行では取り扱っていないケースも多いです。

どちらも金利など金融期間、住宅ローン商品によって異なるため、どちらかに絞るよりも、住宅ローンそのもので金融機関を絞り、そのうえでつなぎ融資、分割融資双方含めて比較検討すると良いかと思います。

幅広い選択肢からご自身に最適な住宅ローンを

改めて整理しますと、建築家・設計事務所と注文住宅を建てる際は、
・ご自身で金融機関・住宅ローン商品を探す・選ぶ
・ご自身で金融機関に相談し、手続きを進める
・つなぎ融資や分割融資を検討・利用する
等々、ハウスメーカーと建てる場合に比べ、やは複雑で手間がかかります。
特に、依頼から完成までの期間が長い分、つなぎ融資や分割融資の必要性は高くなるでしょう。

一方で、ハウスメーカーと建てる場合でも、金融機関・住宅ローン商品は慎重に検討したほうが良いですし、契約手続きも最終的にはご自身で行う必要があります。

建築家も親身に相談に乗ってもらえる方が多いので、まずは調べてみる、問い合わせてみることからぜひ始めてください。 住宅ローンを調べることで、建築予算の上限の目安も見えてきて、建築家にもより具体的な相談ができるかと思います。

インターネットで比較・相談できるサイトやサービスも増えてきており、複数の金融機関、住宅ローン商品の比較も以前に比べると簡単になってきていますので、それらも活用してみると良いでしょう。

著者:SumaIdeaサポートデスク(その他の専門家/東京都)

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