建築士から見たリノベーションの考察・注意点

一級建築士事務所 クレアシオン・アーキテクツ

著者:一級建築士事務所 クレアシオン・アーキテクツ(建築家・設計事務所/東京都)
2021-08-13更新
建築士から見たリノベーションの考察・注意点

現在、新たに住宅を建てる新築に対して、リノベーション、更に骨組みだけを残して残りすべてを作り直すスケルトン・リノベーションが注目を集めています。

・新築より費用が安い。
・新築と変わらない新しい生活を送れる。
・さらにはお年寄りなどの世帯は昔の思い出を残せる。
・築30年の住宅が資産価値を取り戻す。
・耐震補強をして来るべき大地震に備えられる。

など良い事ずくめな話を耳にします。
実際はどうなのか?設計者としての考察を解説します。

費用について

スケルトン・リノベーションの場合、新築工事に比べて、7割くらいの費用で済みます。

ただしそれは、木造の骨組、基礎コンクリートなどがそのまま使えればの話。実際には壁をとってみなければわかりません。

骨組、基礎が痛んでいたり、土地の陥没などがあれば追加の費用がかかることになります。そのような問題が発生した場合、補強で済むのか建て直しの方が良いのか再度検討をすることになります。

耐震補強について

いろいろな工務店、ハウスメーカーがリノベーションと耐震補強をセットにしています。家全体の補強であれば、200万円くらいは追加で予算をみておく必要があります。

その上で、築30年を経た木造住宅などには、地方自治体から補助金が出ます、地区によってまちまちですが、東京都の杉並区では100万円前後でるようです。

ただし、安心できる耐震補強をするにはスケルトン・リノベーションですべての骨組、基礎コンクリートを目で確認した上で、全体のバランスを見ながらでなければよい補強はできません。その点は注意が必要です。

住宅性能について

住宅性能といえば主に断熱性能、冷暖房など生活の上でどれだけ電気ガス水道の料金を抑えて、ローンの負担を軽減できるかが問題となります。

リノベーション工事では、屋根を軽量化したのち太陽光発電パネルを屋根に乗せ売電収入を見込めます、専門家に相談してください。

断熱性能はスケルトン・リノベーションの場合、耐震補強を施すと同時に現在の性能の良い断熱材を壁内に入れ直すことになりますので良くなります。

冷暖房、電化製品などを最新型の物に、照明はLEDに置き換えることで初期費用はかさみますが、トータルではかなり抑えることができます。

ただし、やはり新築の方が思い切った見直しができる点、有利になります。

エコと思いで、お年寄りの健康

リノベーションの大きなメリットはやはり人に、心に、良いことです。既存の使える骨組、コンクリートを残して使うことは自然環境に配慮する事にもなります。

長い間住み続けている家族にとっては、住宅はそれ自体が歴史。リノベーションで残してゆく価値があるでしょう。

そして何より建て替え、引っ越しで一番体を悪くするのはお年寄です。人は枕が変わっただけでも眠れなくなることがあります、ましてお年寄りは、自分では気がつかなくても家が変わってしまうと生活も体も心も乱れてしまいがちです。リノベーションで前の生活の跡を少しでも残してあげることでそれを軽減できます。

実はかなり注意が必要なリノベーションですが、資産価値が無いと考えられがちな古い家を生まれ変わらせそこで新しい豊かな暮らしをおくることができる。これからのそんなリノベーションがさらに手軽に増えてゆけばいいですね。

著者:一級建築士事務所 クレアシオン・アーキテクツ(建築家・設計事務所/東京都)

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