軒が深いから「おいでよ House」
– 大切な人を、傘を差したままでは待たせない –
「新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたい。そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです」
奥様からこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと考えた。
自身が生まれ育った兵庫県中部に位置する街では、玄関に軒や庇が無い住宅など無かったのだと思う。市街地で暮らすようになり、そのことに気づき、言葉にできるところが凄いと思ったのだ。
敷地は大阪市内の住宅地。間口5m程の敷地で、北側にまずは駐車場を確保。残った細長い空間に、エントランスと階段を配置した。そして、敷地境界ぎりぎりまで、1m程ある軒をL字に張り出した。
1階には3つの個室。2階の南側にLDKを配置し、9畳程あるロフトを設けている。天井高は4m以上あり、面積以上の解放感を与えてくれるはずだ。
大きなロフトは遊び場としてかなり期待しているが、キッチンとコンタクトしやすい位置にもこだわった。
ロフト下には天井高を抑えられる、浴室など水廻りを集中させた。洗濯物乾燥機も備え、家事動線が短くなるよう配慮している。
北側道路に面したスタディコーナーは、コンパクトな方が集中できるのではと考えた空間だ。コロナ下の社会ではオンライン授業が増え、より価値が増すかもしれない。
コンセプトとは出来上がった建物を説明するためにあるものではない。生物にとってのDNAのようなもので、この建物が存在する理由の根幹にほかならない。
「おいでよ House」
これ以外に、名前が思い浮かばないのだ。
縦に長い敷地。間口5m程の敷地に、駐車場とエントランス周りの空間を配置した。 細身のファサードが、軒をより引き立ててくれる。
そのシビアな配置の中で、1m程もある軒の張り出し。 「今は家の中がゴチャゴチャしていて、なかなかお友達にも来て貰えない。 新しいお家が出来たら、今はお呼ばれしているお友達を是非招きたいんです。 そんなお友達を家の前で、傘を差したまま待たせるのは嫌なんです。」 奥さんからこの話を聞いた時、この計画の幹となるコンセプトにするべきだと思った。 プロジェクト名はその場で『おいでよhouse』に決めたのだ。
1階には3つの個室とガレージにつながる土間収納を兼ねた勝手口がある。
正面の南側に大きな開口を設け明るいリビング。 特に東の高い位置にある窓は、最後の最後まで迷い、現場で打合せをしてから採用になった
キッチンの上部にあるロフトとの関係は、なかなかに面白い構成になっている。 ロフトは主に子供の遊び場所だが、ロフトの手すり下部は足が出せるようにし、座ればキッチンとの会話がしやすいようになっている。
1階2階とも廊下にはニッチが設けられちょっとした小物をディスプレイできる。 手間に見えるガラスブロックはサンワカンパニーのチェコガラスを2種。
玄関の上に位置する畳2畳ほどの勉強部屋。勉強に集中できる環境。
お手洗い
ゴミ箱をすっぽりと収めた空間。除かなければ見えない。上部に予備の袋置きは引き出せる。