本計画地には元々築年数が不明の古民家が建っていた。現地調査の段階では既に増築やリフォームを数回繰り返されていたが、半世紀ほど前には土間の台所や薪釜、離れに厠や五右衛門風呂などがあったとの事。
残念ながら東日本大震災では建物に大きなダメージを受け、害虫被害も見受けられていたことから今回建替える事とした。
計画当初から大黒柱をはじめ、なるべく古材を再利用する方向で検討していたが、解体が始まった際に確認したところ想像以上に虫食いが酷く、利用できる部分は室内に露出していた部材のみ。結果として使えそうな部分から厳選して再利用する事とした。
玄関ドアを開けると広い玄関土間が続き、再利用された太い大黒柱や梁が存在感を示す。また室内建具で使用されていた組子細工も当時と同じ建具職人の手により新しく生まれ変わらせた。
以前の建物の存在を継承しつつ、世代を超えてもその歴史を受け継いでいく。そして高気密高断熱住宅として生まれ変わったこの家は、家族が家の中心に自然と集まる空間とし、快適な生活とともにまた新しい歴史が刻まれていく。
建て替える以前の建物は古いが愛着もあるので使える材料は新築住宅でも再利用したい。また高気密高断熱住宅として快適な家にしたい。
当初は築年数が古い既存建物のリノベーションの可能性もあったが、建物自体のさまざまなダメージやコストを考慮すると建て替える事が最良とクライアントとの話で決定した。しかし私自身も単に解体してしまうのも惜しいと思い、可能な範囲で古材の再利用を検討。その結果適度に「和」を取り入れたデザインとして古材の存在を空間に馴染ませた。
杉板縦張りとして経年変化が楽しめる外壁
大黒柱と化粧梁を再利用しています。古材と新材のコントラストが美しいです。
間仕切りと天井に使用している組子細工も建て替える前の家で使用されていたものを再利用しています