敷地内で診療を続けながら建替えた木造医院併用住宅(医院部分)
(医療・介護・保育・教育施設)

アーキネットデザイン合同会社

敷地内で診療を続けながら建替えた木造医院併用住宅(医院部分)

これは住宅併用医院の建替えプロジェクトです。日本の至る所に住みながら医院を開院しているお医者さんはいることと思います。本事例はそんな地域に根差し時に往診や時間外対応もしてくれる、地域にはなくてはならない医療機関を、移転や休診せずに、現敷地内で家と医院を建て替える画期的な試みです。

お施主様のご希望・お悩み・課題

お施主様である院長先生のご希望は、診療を休むことなく、患者様になるべく負担をかけないで、家と医院を建て替えること。さらにこの40年住み続けた敷地にはその年数で立派に育った庭があるのでそれは残すことでした。ただし、この敷地は市街化調整区域にあり診療所を単独に建てることは出来ません。

ご希望・お悩み・課題への提案

幸い敷地は細長く、医院併用住宅と従業員用住宅がガレージを介して繋がった細長い建物でした。そこで、私の提案は、数年かけて建物を4段階に分けて建替え、ドミノ式に移り住むことでした。仕組みは次の通りです。
ステップ1:敷地内にある今は使用しなくなった従業員住宅とガレージを壊しそこに住宅を建てそこに住む。
ステップ2:医院併用住宅の一部を仮診療所に改装し、医院、住宅ともに移転後の建物を壊す。
ステップ3:仮診療所と新築住宅の間に新しい診療所を建設し、完成後に住宅と廊下でつなぐ。
ステップ4:仮診療所を壊し、そこに駐車場を作り、残した隣接する庭をきれいに修景する。
完成した医院の待合からは従前から残った歴史ある庭を眺めることができます。

修景し新しくなった庭が眺められる待合室です。

修景し新しくなった庭が眺められる待合室です。

修景し新しくなった庭が眺められる様に待合室のソファーをつくりました。 昔の名残の残る景観と木と漆喰の自然素材が患者様に安らぎを与えてくれます。 南の大きな開口部には外部にアルミブラインドを設けたので、直射日光は制御しながら取り入れています。 また、腰壁は外装と同じ米杉の板張りにしました。外装材を一部内装に用いることで内外の空間に連続感が生まれるようにしています。

木の温もりのある受付カウンター

木の温もりのある受付カウンター

待合室の床材を用いて作成した受付カウンターです。 白い漆喰の中に木の柔らかな質感が患者様に安心感を与えてくれます。 受付上部にはアルミブラインドが仕込まれており診療の休みの時間帯にはこのオープンな受付を締めることができます。

もう一つの待合室

もう一つの待合室

こちらは東側に面しており、高窓から午前の柔らかな明かりを取り入れています。ソファーの座面は収納になっており古い書類等が収まっています。

南側庭から見た待合室

南側庭から見た待合室

南側の庭から待合室を見る。吹き抜け上部の窓には外部アルミブラインドが設けられています。電動なので毎日の天候と時間に応じて光の取り入れを調整できます。正面は建て替え前の医院を開設した時に植えた長い歴史と思い出のある樹木ですので、一番見えるように残しました。

トップライトからの間接光が柔らかく包み込む診察室

トップライトからの間接光が柔らかく包み込む診察室

診察室は患者さんが心おだやかに診察を受けられる様ある程度個室感が必要だが、閉じ過ぎてしまうと閉塞感で緊張してしまうので、その加減が難しいですが大切です。診察カウンターもこの形状がアーキネットデザインのオリジナル形状ですが、診療科目やドクターの診察スタイルで形状は少しずつ変わります。

玄関ホールの風除室

玄関ホールの風除室

医院の玄関は靴の履き替えが大きな課題です。履き替えは、大変だし靴の取り違えも多い、しかし土足だと院内が汚れる。診療所の立地や院長のお考えでその答えは様々です。ここでは、あえて段差を設けて靴は履き替える様にしました。ですので、スロープや手摺りなどいろいろ設けられています。大きな自動ドアは全体の木質の空間に合わせて木製ドアにしました。

医院の東面です。右側に見えるのが住宅部分です、

医院の東面です。右側に見えるのが住宅部分です、

敷地が南北に長く、写真の左側が南です。左奥が建替え前の残した庭で、正面が医院で北下がりの方流れ屋根にしたのは、北側の住宅部の日照を確保するためです。

住宅の玄関です。

住宅の玄関です。

正面の木格子部分が住宅の玄関です。その左に見える外壁が医院部分で、右側のシャッターはアルミ製の跳ね上げ式シャッターで中は2台分のインナーガレージとなっています。この跳ね上げ式シャッターは動作音がとても静かでオススメです。外壁は米杉板にオイルステイン塗で、グリーン色は院長先生が選びました。屋根は、天然のスレート葺きです。天然の石ですので、重いのが欠点ですが、耐久性と経年の美しさが魅力です。

お施主さんの声

長年住み続け、診療を続けた土地を離れることなく、家と医院を建て替えられたことにとにかく喜ばれています。さらに、外壁のグリーン色を10色程度のサンプルからご自身で選べたことも嬉しかったようです。

敷地内で診療を続けながら建替えた木造医院併用住宅(医院部分)(医療・介護・保育・教育施設)の情報

作者
アーキネットデザイン合同会社
所在地
埼玉県新座市
概要
木造2階、長ホゾ込み栓の軸組工法。屋根は天然スレート、外壁は洋風漆喰仕上げと米杉縁甲板張り、内装は壁天井漆喰、床無垢板(胡桃)、ほぼ全ての仕上げが自然素材仕上げとなっておりますので経年の変化が楽しみです。
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