藤沢駅から近い商業エリアのちょっと路地に入った裏に佇む小さな焼杉カフェです。首都圏の駅近くはほとんど防火規制がかかっています。以前はこの様な防火地域では木を外壁に張ることは規制されていました。しかし、今では一定の防火性能を持った木の張り方が開発され張りことが出来ます。ただ、まだまだ建築家にもあまり知られていません。ここでは、安価なこと、燃えにくいこと、維持管理が楽なこと、と理由焼杉を採用しましたが、他にも色々な木の外装があります。
都会のビルが建ち並ぶ大通りの裏路地に、こんな小さな木の建物が少しずつでも増えてゆくことを願いたい。
いち建築家として、一つ一つでも。
コストを抑えて小さなカフェを作ることが建主様のご要望でした。
それに対して、弊社が企画提案するコストを訴求する小さな木の家『1、5階建て住宅』でカフェにすることをご提案しました。この企画は、安普請な仕様ではなく、本物の木の家仕様です。無垢の杉桧を長ホゾ込み栓の軸組工法で組み上げ、無垢板の床で仕上げたハイスペック仕様の建物です。なぜこれがローコストで出来るのかというと構造体を極力見せる代わりにクロスや塗装などのいわゆる内装がないのでコストが抑えられています。ちょっと乱暴な言い方ですが、コンクリートの打ち放しならぬ木のやりっ放し仕上げです。それとこの様な建物は昔ながらの腕の良い小さな工務店にピッタリな工事であることもコストが抑えられている大きな理由です。ちなみに今回も壁の漆喰は建主様がご自身で塗ることで内装費用を抑えました。
南側がビルなので日当たりは悪いです。こんな時には、北向きに建てることをお勧めします。いすれにしても建物に十分な直射日光は入りません。それであれば、逆転の発想で建物を南に寄せ、比較的日当たりの良い敷地の北側を庭とするのです。この写真は冬の昼前です。東寄りの日が北側のウッドデッキに差し込んでいます。この北側のテラス席、冬は少し寒いですが、夏は涼しくて快適です。この考えは住宅でも十分生かされますので覚えてください。
内装は、木と窓と壁下地は大工さんが施工し、建主さんが漆喰を塗る。こんなシンプルな建物の造り方をすることで工事は驚くほど安くなります。 また、北向きのこの空間、直接日光が差し込むことはほとんどありませんが、見ての通り室内はとても明るいです。これは、北側の天空の明かりが大きな窓から注ぎ込むからです。多くの方が、明るさの元が日当たり(直射日光)だとお考えですが、それは誤りです。直射日光がなくても晴れた空(天空)はとても明るいです。また、大きな窓は直射日光で暑くなってしまったり眩しかったりが大きな欠点で南や西向きには不都合が多いです。しかし、この様に北向きの窓は思い切って大きく出来ます。また、北向きの窓から見える景色は順光で美しいのも北向き建物の醍醐味です。
室内はコスト重視で杉の厚板、屋外は耐久性の良い栗の厚板、床板は厚さが3cmもあるので見た目も歩く感触もとても良いです。ぜひ、お試しを。木は、適材適所が最も大切。これを間違えると木はだめ、となる。建築家は材料やその扱い方をきちんと知らなければいけません。
漆喰塗りの道具の貸し出しや施工指導は我々がしましたが、見事な仕上がりです。まあ、向き不向きはありますが意外と素人でも塗れますので興味がある方はトライしてください。工事に少しでも参加するのはとても良い事です。職人たちの邪魔はしてはいけませんが、建物がどの様にして人の手でできるのかを知れる一番の方法です。知ることはとても大切です。