※2018年11月 大阪ガス情報誌『住まう』に掲載されました。
大阪の静かな住宅街。敷地は角地で、特徴のある形をしている。
2015年の夏から、候補になった敷地はいくつかあったが、エリア、環境、価格と、全ての条件を満たすのは簡単ではない。
ようやく見つかったこの敷地は約110㎡。この位の広さがあれば、駐車スペースと中庭が確保できる。
南の中庭から光と風をとりこみ、西面にはエントランス、2階はクローゼットとし西日対策で閉じた。敷地形状に沿って、最大限のボリュームを確保しに行く過程で、特徴ある外観となった。
各個室は2階とし、中庭を囲むようにLDK、浴室、和室を配置している。キッチンと繋がるこの2畳ほどの小さな和室は実に多機能である。
洗濯物を畳む、子供の昼寝、雨の日は物干しにもなる。ここで畳んだ衣類を壁面に収納すると、反対側の洗面、脱衣からとれるようにもなっている。
キッチン後ろにある家事スペースも含めて、仕事、家事、子育てに奮闘する奥さんと練りに練った配置となっている。
内部壁はほぼ珪藻土。床はヒノキの無垢材となっている。計画の当初より、ご主人から「不自然でない」というテーマを貰っていた。
「例えばカロリーゼロって不自然じゃないですか」と。言われてみればその通りだ。
美味しい。だけど実質食べていないことになっている。これが本当なら、ある意味ホラーともファンタジーとも言える。
しかし、家は幻想ではなく実物である。自然で、素直で、無垢な中庭のある家。
共働きで子供さんは就学前。人生の中で最も忙しい時期に、クライアントと一緒に直球ど真ん中で勝負したつもりだ。
それらに応えられたかどうかは、5年後、10年後を待たねばならない。しかし、1年点検の際は、「とっても快適」と言って頂いたのだ。
共働きで忙しい子育て世代のご夫婦。家事導線にこだわりたい
キッチンの裏に書斎を設置。子供の様子を見ながら仕事、片付け等ができるスペースを設置。
洗面の収納棚は和室と繋がる。庭で干した洗濯物を和室でたたみ、そのまま収納すれば洗面から取り出せる。
南の中庭から光と風をとりこみ、西面にはエントランス、2階はクローゼットとし西日対策で閉じた。敷地形状に沿って、最大限のボリュームを確保しに行く過程で、特徴ある外観となった。
建物の形状は、敷地から検討した。 この敷地を見せて貰ったあと、すぐにプランのイメージは浮かんできた。
そこからクライアントと修正を重ね、ここに至ったのですが、くびれの部分が真っすぐだと建ぺい率がオーバーする。 このくびれの部分に、納戸やトイレの開口部を切り、その形状を強調している。 ピンチはいつもチャンス。
リビングは比較的コンパクトにまとめた。 軒のある中庭に面しているので、暑すぎず、寒すぎない空間となっているはずだ。 一方、ダイニング、キッチン、家事スペースはゆったりと繋がる。
特に、キッチンと家事スペースは、何を置くか、どのような視線の抜け方が適切で心地よいか。 奥さんと入念に打合せした。
キッチン南にある、2畳程の和室は現代サッカー用語で言えば、ポリバレントな空間。 (ポリバレント=複数のポジションをこなせる) お子さんのお昼寝、洗濯物を畳む、雨の日の物干しと、最低でも3役はこなしてくれる。
フルタイムで働く奥さんの仕事部屋にもなるのが家事スペース。 モザイクタイルに拘った、洗面脱衣と隣り合う。
和室に洗濯物を取り込みたたむ。和室収納に入れる。反対側の洗面から取り出す。 これも、何とか日々のくらしを楽しく、効率よくしたいという強い気持ちが、このプランを実現した。
入れるものを考え収納される
ゴミ箱のサイズも詳細を聞き、蓋が開いたその上に、ストックのゴミ袋を置くスペースを設けてある。 奥さんからはスケッチまで頂いた。 有るべきものが、有るべきところにあって欲しい。 仕事、家事、子育てと、忙しい日々の中で、家族との時間を少しでも捻出するために、あらゆることを効率よくしたい。 そんな純粋な本気に、いつも応えたいと思う。
家の中を見渡せば、例えば塗り壁の模様一つ通しても、人の手を介して造られた形跡が目に飛び込んで来ます。その度に施工会社の方や現場で見かけた職人さん達の顔が思い浮かびます。
自分達の要望が細部にまで宿っている家、そして人の手の温もりを感じる家に暮らす幸せを毎日噛み締めています。