この住宅は、世田谷にあるお寺の庫裡。若い住職とご家族の住まいです。
法的に木造とすることができないことからRC造とし、安定した温熱環境と建物の耐久性の向上といった観点からRC外断熱工法を採用した建物です。
敷地は、お寺の境内という条件にあって、
「外観と檀家さんが使用するスペースは本堂や周辺とのバランスをとったデザイン」
「家族のスペースはカントリー調」
といったことが求められたものです。
住まいの他に、応接室、法衣室といった部屋の他、奥様が華道を教えるための部屋もある家です。
内装や建具に使用する木はバーチ材を主として、レッドシダー、たも、桧、栗の無垢材、漆喰や珪藻土(ライムコート)といった壁材、テラコッタやレンガ等をフローリング以外の床に使用した自然素材の家です。
既製品や石油化学製品の使用を極力少なくすることで
「これからの長い月日を共に過ごすことができる味わいと暖かみのある建築」
となることを期待した住まいです。
<外観>
道沿いには数多くのお寺や庫裡と共に一般住宅が建ち並び、近隣の人達の散歩道にもなっている、閑静で緑が豊かな地域です。
道に大きく枝を張り出した桜の木だけでなく、
「既存の樹木は可能な限り残すこと」
鉄筋コンクリート造であっても、
「周辺の木造による街並みの中に融合できるものとする」
「これからの環境・街並みづくりに寄与しうる建築にする」
ということを意図して形づくりました。
この建物には住居用玄関、檀家用玄関、華道教室用玄関と、3ヶ所の玄関があります。 住居用玄関はやや控えめな位置としながらも、他の玄関と庇の形状を合わせました。 玄関内部は、床・建具・家具はバーチ(カバザクラ)の無垢板、天井はレッドシダーの無垢材にいずれもオイル仕上とし、壁はスイス漆喰をコテで塗って仕上げました。 写真は玄関より正面に階段を見たもので、右手が三和土、左手がダイニングへの入口です。
これまで手がけた住宅の中でも特に高い天井高のリビングとダイニングです。 リビング(奥)とダイニング(手前)は雁行させることにより、繋がっていながらもそれぞれが独立性の高い場所としました。 薪ストーブの奥のリビングはその一部をアルコーブ状の場とし、木製の板張り天井とすることで、落ちつきのある場としました。 写真は、タイル貼りのキッチンカウンター越しに正面のダイニングとリビングを見たもので、リビングの手前は薪ストーブ、左手は南庭です。
アルコーブ状のリビングより木製の窓(防火認定窓)越しに南庭を望む
写真はリビングの薪ストーブ前より高天井のダイニングを見たものです。 ダイニングの奥はパントリーです。
キッチンは、リビングやダイニングだけでなく、吹き抜け越しに2階の子供室や 主寝室、書斎とつながり、家族の気配が感じやすい場所としています。 写真はキッチンの入口部より見たものです。 キッチンの奧はパントリー。 パントリーからは、道路と南庭をつなぐ外部通路の途中に出ることができるようにしています。
奥様が華道を教えるための水洗いができる床の部屋で、独立した玄関と勝手口を設けた半円形の部屋です。 既存の桜の木の下にもぐり込ませるように造った場所で、天井に設けたトップライトからはその桜の木を見上げることができるようにしました。 床はテラコッタタイル、天井はベイスギ白色塗装仕上げです。
右手は家の中心部、住居用玄関の脇に設けた階段室、左手の階段上部にはご主人の書斎コーナーを設けました。
リビングの吹抜けに面するトップライトを設けた主寝室です。 主寝室の奧はウォークインクロゼット。 天井はレッドシダーの板貼、床や出入口ドア、クロゼットは全てバーチ材でつくりました。 写真は入り口側を見たもので、左手は造付けのクロゼットです。
ダイニング上部の吹抜けに面する子供室です。 ロフトを設けると共に、いつでも2室に区切ることが可能な部屋としました。 2室に分けた際にも、双方の部屋が南面するように配置しています。 写真はロフトの上部から見おろしたものです。