自宅の建物の一部を賃貸住宅として他人に貸し出す、賃貸併用住宅。家賃収入による住宅ローンの負担軽減、節税効果などのメリットが謳われています。今回は、賃貸併用住宅のメリットやリスクなど、建てる前に知っておきたい基礎知識についてお伝えします。
賃貸併用住宅とは、自宅の建物の一部に賃貸住宅を組み込んだ住宅のことです。一般的には、自宅部分が賃貸部分より広くなるように建てられます。(賃貸用の建物を建てる場合はアパートローン等が適用されますが、自宅部分の方が大きければ住宅ローンを適用できます。住宅ローンはアパートローンよりも金利が安く、住宅ローン減税の対象にもなるため、住宅ローンを適用できるように自宅部分を賃貸部分よりも広くつくるのが一般的です)
大手ハウスメーカーや不動産会社も力を入れていて、商品や一括借上げのシステムを組み込んだサービスも生まれています。
賃貸併用住宅の最大のメリットは、家賃収入。家賃収入がローン返済額を上回れば、その期間中のローン負担をゼロにできます。
ただし、後述しますが時間の経過とともに家賃収入は下がりますし、空室リスクや管理の負担も少なくありません。販売側はメリットを強調しますが、将来的な負担、リスクも考えた上で、慎重に検討するようにしてください。
賃貸併用住宅は、条件を満たすことで住宅ローン減税を受けることができます。もともとの金利差や審査基準もあり、アパートローンに比べ有利といえるでしょう。
また、家賃収入についても所得税がかかりますが、減価償却費やローンの利息、固定資産税、損害保険料などを経費として計上できるため、確定申告を行えば節税できます。手間はかかりますが、賃貸併用住宅を建てる場合は、必ず抑えておきましょう。
その他、条件によって差がありますが、同規模の建物であれば、全てが自宅の建物よりも相続税を抑えられます。
子どもが就職したら賃貸部分の一部屋を子どもに貸す、子どもが家庭を持ったら二世帯住宅に・・・といった変更も通常の住宅に比べて用意です。もともと自宅と賃貸用の部屋はそれぞれ独立しているため、大規模なリフォーム・リノベーションは必要ありません。
逆に、二世帯住宅、三世帯住宅から賃貸併用住宅への変更も可能です。二世帯、三世帯で暮らしていて、子どもの独立後は空いたスペースを賃貸用に変更するケースもあります。
賃貸併用住宅を建てるには、一般的な一世帯住宅よりも大きな建物、広い土地が必要になってきます。入居率や家賃のことも考えると、立地、アクセスも重要ですので、土地の購入価格はかなり大きくなります。
また、建物が大きいため、建築費用も大きくなります。
もちろん、空室や家賃下落のリスクも小さくありません。不動産会社やハウスメーカー、WEBサイトでは家賃収入、ローン負担の軽減などのメリットが強調されていますが、安易に家賃収入を見込んだローンを組んでしまうと、支払いが困難になってしまう可能性もあります。
一括借上、家賃保証などの仕組みもありますが、その分家賃収入は下がりますし(借上を行う会社の経費・利益を負担しなければならないため)、年数の経過によって更新のたびに保証家賃が下がっていきます。
また、借主(入居者)との関係性も重要です。自宅と同一の建物内に住むことになるので、騒音や振動、臭いなどちょっとした生活習慣のずれがストレスやトラブルの原因になることも。十分に注意してください。
以上、今回は賃貸併用住宅のメリット、デメリット・リスクについてお伝えしました。よく目にするテレビや雑誌、WEBサイトの記事は、基本的には企業側の視点で書かれていて、メリットが強調されがちです。甘い言葉だけに惑わされず、リスクを十分に認識し、「不動産経営」であることを意識した上で、慎重に検討するようにしてくださいね。
もちろん、しっかりと準備、計画し、上手く経営を行えば得られるメリットは大きいので、関心のある方は、いろいろ調べてみてください。「家づくりガイド」でも、引き続き賃貸併用住宅に関するお役立ち情報を掲載していく予定です!