施主自身で大工、職人、専門工事会社に発注する注文住宅の分離発注。コンストラクション・マネジメント(CM方式)。そのメリット・デメリットを解説します。
注文住宅の分離発注とは、施主(家を建てたい人自身)が、大工さんや職人さん、水道工事会社や電気工事会社といった専門工事会社に直接発注する方法です。
一般的に、注文住宅を建てる際には、ハウスメーカーや工務店、設計事務所に依頼して、依頼先の業者が元請となって専門工事会社を取りまとめます。(ハウスメーカー、設計事務所の場合は、工務店に元請機能を外注しています)
分離発注の場合、その元請会社の行っている工事のディレクション、進捗監理を、施主自身が行います。
分離発注を行うメリットは、建築費用を安く抑えられることです。
ハウスメーカー⇒工務店⇒大工・職人・専門工事会社と、経由する会社が多いほど、それぞれの経費・利益が費用に上乗せされる、中間マージンが発生します。特にハウスメーカーに依頼すると、営業マンや管理部門の人件費、広告費用、モデルハウスの建築・維持費用、住宅展示場に払う費用など、建築費用ではない費用を負担することになります。
分離発注を行うと、これらの中間マージンの負担を無くすことができます。
一方で、分離発注を行うと、施主の時間、労力の負担はかなり大きくなります。
それぞれの大工さんや職人さん、専門工事会社に直接連絡を行い、見積の確認、費用の支払い、工事の品質・進捗の確認を行う必要があり、トラブルが起こると、その都度、対応しなければなりません。経験豊富なプロの現場監督でも、しばしばトラブルに見舞われたり、工期が遅れたり、追加費用が発生したりするので、その負担はかなり大きいことが想像できます。
また、メリットで挙げた費用についても、知識が乏しいと、デメリットになります。
大工さん、職人さん、専門工事会社の立場に立つと、1つの家を建てて終わりのお施主さんよりも、継続的に仕事をもらえる工務店や設計事務所の仕事を優先させます。そのため、個人の施主に対しての優先度が下がり、利益を抑えてでも仕事を受注しようという意識が低くなるので、工務店や設計事務所の仕事よりも利益を増やそうとするケースが少なくありません。
また、悪質なケースでは、素人だからと利益を大幅に上乗せして見積を出す可能性もあります。
これらの理由から、一般的な方には、分離発注はおすすめできません。コストメリットで分離発注を進めるコンストラクション・マネジメント(CM)を行う業者の場合も、実際には施主の負担は大きく、コストメリットもあまり働きません。
建築の知識・経験が豊富で、十分に時間や労力が取れる方なら、コストメリットを活かせると思いますので、分離発注も検討してみてください。